商店街の先の交差点
最近僕は坂井駅をよく飛び越える。 いつも逃げるようにしてバスに乗り込む。 そして車内でも最初の5分はいつも寝たふりをする。 だからほぼ毎日来るこの駅の事については、 うわべだけしか知らない。 よくありふれた名前の商店街。 どこにでもある駐輪場、スーパー、ファーストフード・・・ 珍しいものといえば浄水場ぐらい。 知っているのはあと終バスの時刻だけか。 一昨年までは自転車でよく通ったものだ。 僕が当時憧憬の先に見ていた人と・・・ かなり遠回り、それでも短く思えた。 通る道は駅からは少し離れている。 ディーラー店のある交差点が恨めしく思えた。 単に憧れだったかもしれない。 不完全燃焼だったのかもしれない。 曖昧なTIDEが本当にTIDEになってしまい、 無駄に時間を費やしていることなんて気づきもしなかった。 相談事や単なる愚痴も聞いてくれて、 冷静に判断してくれる・・・ ただ甘えていただけなのかもしれない。 僕は浄水場の方に、彼女は駅に向かっていつも別れた。 いつも彼女の背中を見ながら街明かりがなければいいと感じた。 僕が今ここを通っても。 街明かりが煌煌としていても。 彼女の姿をこの街で見ることはないだろう。 そんな気持ちを押さえるために、 自分に嘘をついているとわかっていても、 その気持ちから逃げ出せないことさえ理解していたところで、 いつも寝たふりをする。 でも…僕の瞼の中で、 君の背中が街明かりに色づいている・・・ もどる