君の面影
「あの、この書類について伺いたいことがあるんですけど」 僕は、デスクの前の女性に声をかけた。 「はい」 ブルーのJJの彼女はすぐにこちらを向いた。 高飛車そうなまゆ。 覗きこむような瞳。 ウエーブがかったロングヘアー。 ハイトーンでしかもフラットボイス。 思わず君を思い出した。 でも君よりも、すこし落ち着いた感じの女性だった。 君がいるわけが無い! それに、もし君だったらきっと気付くはず! 確かに肩幅も君よりは小柄だし、 口調も君より速い。 でも、 その僕に対する瞳の覗きこみかたが、 君そのものだった。 書類の手続きを終えて、僕はこの場を離れた。 君は今、 何をしているの? 忙しさに身と心を削った僕は、 君を失った。 同じミスは二度としないと誓ったはずなのに 君に似た彼女に逢うまで、 そのことをすっかり忘れていた。 もう君には、助けられないぞ! 僕は忙しさの中にも忘れちゃいけないものを 何か感じた。 もどる