消えないで・・・

「うわっ!?」 木枯らしに落ち葉が舞った。 田舎にある大学なだけに砂塵もまたひどい。 涙目ながら目をあけると、 まだ、目の前に紅葉の葉が? 「なーに、ボーっとしてんのよ!」 赤い手袋をつけた君だった。 いつものように、 何時の間にか君がいた。 君といつから話すようになったのかよく覚えていない。 気がついたら僕のそばにいる。 「今日は寒いね」 「あぁ。」 「だからサァ、ほらほら!」 「かわいい手袋だね。」 「あんがと・・・  そういえば、今日って水曜だっけ?」 「そうだけど?」 「やばいよ。幾何学のレポート・・・」 「ほら、もう君の分もコピーしといたよ」 「サンキュー!ちょっと清書してくるね。」 「おーい、早く戻ってこいよ!」 また北風が舞い上がった。 僕が目をこすっている間に、 すでに彼女の姿はなかった。 そして二度と返事は返ってこなかった。 (なんで突然現れたり、消えたりするのかな。) しかし彼女はそれ以来、 僕の前に二度と姿を見せることはなかった・・・ 赤い手袋ひとつを横断歩道に残して・・・ もどる