この物語はフィクションであり、登場人物、団体 地名及び店舗等は実在のものと異なります。 ---------------------------- いつか通り過ぎた街 ---------------------------- K江駅に着いた。 小雨がぱらついている。 (傘を持ってこなかったな) 僕はバス停まで走っていった。 雨が少し目に入り正面のビルが虹色に見えた。 僕は雨を払った。 髪がたいして濡れていないのが救いだった。 僅か1時間に2本しかないバスは、 今さっき行ってしまったばかりである。 他にM境駅行きのバスは無い。 その待っていた彼はかなり早目に来た。 冷房が効きすぎていたためか、 少し濡れているためか冷たかった。 彼は定刻通りに出発した。 全然見た事の無い風景が目の前を横切っていく。 何時の間にか僕は少しの間だけ記憶を失っていた。 気がつくと見た事のある街燈と街並みが周りに広がっていた。 「T布駅北口」 と彼は告げた。 ・・・ T布駅経由だとは僕は知らなかった。 懐かしさがどっと溢れてきた。 だが実際に経った時間は、ほんの数ヶ月である。 忙しさに流されてはいないと思う。 自分を見失ってもいないと思う。 ただ、知らない街で暮らす事は思ったよりも・・・ もどる