この物語はフィクションであり、登場人物、団体
地名及び店舗等は実在のものと異なります。
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いつか通り過ぎた街
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K江駅に着いた。
小雨がぱらついている。
(傘を持ってこなかったな)
僕はバス停まで走っていった。
雨が少し目に入り正面のビルが虹色に見えた。

僕は雨を払った。
髪がたいして濡れていないのが救いだった。
僅か1時間に2本しかないバスは、
今さっき行ってしまったばかりである。
他にM境駅行きのバスは無い。

その待っていた彼はかなり早目に来た。
冷房が効きすぎていたためか、
少し濡れているためか冷たかった。
彼は定刻通りに出発した。
全然見た事の無い風景が目の前を横切っていく。
何時の間にか僕は少しの間だけ記憶を失っていた。

気がつくと見た事のある街燈と街並みが周りに広がっていた。
「T布駅北口」
と彼は告げた。
・・・
T布駅経由だとは僕は知らなかった。

懐かしさがどっと溢れてきた。
だが実際に経った時間は、ほんの数ヶ月である。
忙しさに流されてはいないと思う。
自分を見失ってもいないと思う。
ただ、知らない街で暮らす事は思ったよりも・・・

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