この物語はフィクションであり、登場人物、団体
地名及び店舗等は実在のものと異なります。
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星
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寒い・・・
寒波がきていると聞いてはいたものの
気温よりも風が凄まじかった。
髪がきっと目茶苦茶になってるんだろうな。
駅への足取りが速くなった。
暫くして僕の脇をを車が猛スピードで通りすぎていった。
冷たい風が僕を叩き付けた。
思わず目をつぶった。

目を開けた。
焦点が定まらないので空を見上げた。
寒波のためか強風のためか、空が澄切って美しかった。
真っ正面にオリオン座が輝いていた。
むかし、一緒に帰ったあの小道からみたあの星たちは
視力が限りなく落ちた今でもはっきりと僕の瞳に写っていた。

あの頃は夢も希望も持っていたのに、
何も焦ってはいなかった。
急ぐこともなかった。

でも、僕は何を今・・・何を焦っているのか?
僕のココロの視力は
まったく無くなってしまっているのではないかと
思えてならない。

帰るとき見たオリオン座も、
一緒にベランダから見たカシオペアも
今も変わらず輝いている。
僕の瞳も物理的には世界を映し出している。

本当は何も変わっちゃいない。
変わったのは自分自身。

そして、、、風がとまった・・・

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